僕の生存日記   第2話:彼女は二重人格

 僕、『川野辺 葉乃』は小竜高校に入ったばかりの、ピカピカの1年生!
 この学校の先輩の『神成 躍人』に振り回されたり、幼馴染で唯一の親友だと思っていた『千羽 緋路』に振り回されたりとくじけそうですが、僕は何とか生きています。


 ある放課後――

 帰り支度をしている僕に、クラスメートがほうきを突きつけてきた。
「川野辺君、今日掃除当番だろ?」
「あ、そっか……」
 クラスメートで同じ班でもある彼からほうきを受け取ると、僕は教室を掃き始めた。
 その時。
「ごめん。川野辺君、今日全部やっといてくれない?」
「――え?」
 思わず固まる。
 そう言った彼の隣から、もう1人の班のメンバーがひょこっと顔を出して、申し訳なそうに笑った。
「悪いな〜!俺達、今日、どうしても外せない用事があって!今度埋め合わせするからさ!」
「え、その〜……」
「大丈夫大丈夫。川野辺君、優しいからやっておいてくれるよね〜?」
 更に、同じ班の女子2人もそんなことを言い出して、半ば無理矢理押し付ける感じで、彼らは僕とほうきを置いて教室を出て行った……


「ちくしょー!!!!!!」


 誰もいなくなった教室で、僕は1人叫ぶ。
 そんなことやってたって掃除は終わらない。僕は渋々教室を掃いていた。
「もうさっさと終わらせよう……。あー本当についてない。ちりとりどこだ、ちりとり」
「ハイ。ちりとり」
「あ、ありが――」
 てっきり、誰もいないと思っていた教室で、振り向き様にちりとりを渡されたものだから、僕は一瞬物凄く驚いた。
 そこには女子が1人、柔らかい笑顔を浮かべて立っていた。
「……って、黒井さん!――いたの?」
「え〜。いましたよ〜?」
 ……てっきり他のメンバーと帰ったもんだとばかり思っていた。
 彼女は『黒井 姫(くろい ひめ)』。同じ班の女の子。正直、普段何を考えているのか分からないが、いつも笑顔でいるのは確かだ。雰囲気からして、いかにも天然と言った感じで、顔も――その、とんでもなくかわいい。
 そんな彼女がいたので、僕は少し緊張しながら話しかけた。
「く、黒井さんは、その、帰らなくていいの?用事とか……」
「用事?ないですよ〜。それに、今日掃除当番ですから〜」
 微笑みながら言う彼女。なんて、真面目でいい娘なんだ……っ!!
「でわ、私、そっちの端から掃いてきますね〜」
「あ、うん。よろしく頼むよ」
 そう言って、彼女のほうきを渡した――

 ――次の瞬間。



「……んだらぁっ!!!!!!!!」


 ドガーンッ!!!!



 ――ん?ι


 い、今、何が起こったんだ……?ιι

 端にあった掃除道具を入れるロッカーが、一瞬でバキバキに破壊されていた……
 ……そう。黒井さんの手によって……


「あーはははは!あーっはっはっはっはっはっはっ!!!!」


「くくくくくくくくく黒井さんっ!!!!????な、何やってるんですか!!??」

 更に周囲にある机を破壊しようとした黒井さんを、慌てて止めに入る。
 その瞬間、殴られた……

「気安く黒井さんって呼んでんじゃねーよ!触んな!!」

 ――あ、あの、一体、彼女の身に何が起きたんですか……?(泣)