グローリ・ワーカ   第14章:ある占い師との約束

 ターコイズ家、ユナの部屋にて。
「「コレだよ!」」
 ユナとマリアの声がはもった。
 ユナが手に持つその水晶は、燃えるように赤く輝いていた。
「な、ぬ、のぉ!?」
 まさかのラッキー展開に、マニュアは混乱している。
「これが『陽水晶』だよ!」
 マリアがマニュアに見せるようにして言う。
「ほ、ホエ〜……。本当に、これが……」
 そう言って、マニュアがその水晶を手にした瞬間。
 ブォン!!
 陽水晶がいっそう強く輝きだした。
「えっ? う、うわぁっ!?」
 それと同時に、シザーバックから強い光が溢れる。
「え、え、なに?」
 慌ててシザーバックからすべての水晶を取り出すと、それはより輝きだし――、
 パアアァァァァ……!
 ブォン、ブォン、ブォン……。
 4つは共鳴するかのように明滅を始めた。
(『4つ集まった水晶は勇者の下で1つの物へと形を成す』――)
 マニュアは図書館で読んだ本の一文を思い出した。これが、グローリ・ワーカの杖、『ゴッド・ウィッシュ』に姿を変えるのか――!

 ――しかし。
 ブォン…………。
 水晶は光ったり暗くなったりを繰り返すだけでなにも起こらず、さらにはしばらくすると光も音も消えてしまった。
「ええぇぇぇぇぇぇ―――――ー!? あれだけ盛り上げておいて、なんだこのオチ!?」
 マニュアは思わず不満を口にした。しかし、なにも起きないし、どうしようもない。
「そ、そんな……」
「マ、マー! でも、きっと、今じゃなくとも。この水晶が揃うことで、あなたたちにとってなにか奇跡が起こると……!」
「う、うん」
 マリアに励まされ気を取り直した。
「でも、この水晶、ユナちゃんのでしょ? 借りちゃっていいのかな……?」
 すると、マリアとマリーナがユナに向かって説明を始めた。
「ユナさん。このマーがね……」
「これこれこうらしいの」
「フーン……。それで……?」
「それで、申し訳ないんだけど、この水晶を貸してほしいわけね」
「え……? なんで……?」
「それは、これこれしかじかだからなの」
「うんうん。かくかくうまうまなわけね」
「で、えーっと……」
「マリアさんが言うに、どーたらこーたら」
「それで、なんたらかんたら。この水晶が、うんたらかんたら」
「…………おーい……。意味不明な会話しないでくれる……?」
 マニュアは置いてけぼりだ。
「――だからなわけ。わかった?」
「うん、わかった。かれこれこうなら仕方ないしね。じゃ、マニュオちゃん!」
「ほえ!?」
 とつぜんユナに声をかけられ驚くマニュア。
「……っていうか、なに? そのあだ名……」
「ハイ、コレ。貸してあげる」
 ユナが陽水晶を差し出した。
 マニュアはさらに驚いて、
「え? いいの……?」
「うん。別にいいよ。なんか、込み入ったかくかくしかじかな事情があるみたいだから」
「ハハ……。ありがとう!」
 陽水晶を受け取って笑う。ユナも笑顔になった。
「じゃあ……そろそろ戻ろうかな」
 マニュアは立ち上がった。
「もうお昼も過ぎちゃってる。それに、なにも言わずに出てきちゃったし」
 ユナの部屋にかけてある時計を見ながら言う。そして、再びみんなの方に顔を向けると、
「ユナちゃん、陽水晶貸してくれてありがとう。必ず返しに来るね。マリーナちゃんも、ありがとう。そして、マリアちゃん……本当にありがとう。私……」
 マリアはにっこりと笑う。そして、
「必ず、生きて帰ってきてね。そして、世界の平和を、未来を――頼みます」
「うん。必ず……! 約束するよ!」
 マニュアは力強く返事をした。

 そして――。
 宿に戻る途中、道がわからなくなって迷うのは別のお話。
「ゑ!?」