グローリ・ワーカ   第16章:Live or Die

 そのころ、死んだかもしれないニールとティルは。
「「誰が死んだ! 誰がぁー!!」」
 なんだ、死んでなかったか。チッ。まぁそう簡単にはやられないよね、ストームみたいにはさ。
「舌打ちすんな!」
「それより、『ストームみたいには』って……どーゆー意味!?」
「そこ! なにを無駄話している! アース スプリット!!」
 ビシッ!!
 トンヌラが呪法を唱えると、大きな音と共に床が裂けた。
 実は2人とも、これまでに何度もこの呪法を受けているものの、なかなか素早くこれを避けている。だからこそ、トンヌラはかなり頭にきていることだろう。
 しかし、このままもまずい。2人もまだトンヌラに一撃も与えられていないのだから。
「くそっ……! 爆風拳!!」
 ニールが拳に光を集めてそれを放つ。
「クロッド バックラー!」
 しかし、それはトンヌラが呪法で出した盾にほとんど遮られてしまった。わずかに零れた光がトンヌラの脇を掠めていった。
「ふん、残念だったな」
「よぉし、じゃあ、私も――カオ……ッ!」
 ティルが魔物を呼び出そうとした瞬間だった。
「アース スプリット!」
「きゃっ……!」
 それが仇となったのだ。
 隙ができたところへ、またもやトンヌラの呪法が放たれた。
 ティルは体勢を崩して、呪法で割られた床の裂け目へと足を滑らせてしまった!
「きゃああああぁぁぁぁ――――ッ!!!!」
「……ッ! ティルッ……!!」
 ガシッ!!
 ティルは大きく目を瞑った。もうこれで終わりかと覚悟をした。
 しかし、いつまで経っても地に着く気配はなく、代わりに腕になにか温かいものが触れていた。――いや、しっかりと包まれていた。
 ティルはそっと目を開いて、その感触のする先へと視線を仰いだ。
「――! ……クラベット……!」
 転落しかけたティルの腕を、ニールががっしり掴んでいた。額には汗が滲んでいる。
「くっ……!」
 宙ぶらりんの状態のティルを、ニールは片手で支えている――。
 これは、絶体絶命のピンチ……!? ニール&ティルVSトンヌラ戦、次回へ続くぅ!!
「「ええええっ!? この状態で!?」」

 あと1箇所ほど中継。
 ヤン&アリスVSキリオミ戦は……?
「はぁはぁ……。なかなかやるっスねぇ」
「いや、おまえもなかなかだな」
 まだ2人の魔法(呪法)合戦は続いていた。
 ……ところで、ヤン。さっき火の魔法使ったりした?
「火? いや、火は使ってねーぞ」
「うん。使ってないよね。それがどうしたの?」
 そうですか。いえ、べつになんでもありませんわ。
「そんな無駄口叩いてる間に、また攻撃するっスよ?」
 キリオミが身構える。
「あぁ、すまん。……しかし、簡単に勝てると思ったんだがな」
 なんだか失礼なことをさらりと言うヤンだった。
「でも、本当……。なんか、キリオミって、四天王の中で1番下っ端そう……」
「うっ!!」
 アリスも失礼だった。だが、鋭かった。
「そ、そーっスけど……。ヒドイっス――――ッ!! エア バインド!」
「うわっ!? う、動けん……!」
 ヤンの体、見た目にはどこも異変などない。しかし、実はキリオミの呪法により空気でできた縄で縛り付けられていたのだ。
「これは戒めの呪法なんっスよ〜。これでおまえは1歩も身動きが取れないっス〜♪」
「なんだと!? いったい、俺をどうする気なんだよ!」
「さて、どーするっスかねー?」
 キリオミがニヤニヤ笑いながらヤンに近付く。こちらも絶体絶命のピーンチ!!??
「サ、サンド……! 私はどうすればいいの……?」
 アリスが困惑して様子を窺う。
 キリオミはそんなアリスに気付き、くるりと方向を変えた。
「あ、そーっスね。この娘は……。――このパーティーって、かわいい娘が多いっスねー」
 そう言って、アリスの前までやって来ると、顔を引き寄せ――、
 バシッ!!
「ぎゃんっ!!」
 なんとも情けない声で吹っ飛ぶキリオミ。
 そう、アリスにハリセン――じゃなかった、扇子で力いっぱい殴られたのだ。
「女の子だからって、甘く見ないでよねっ! 女の子だって強いんだから!」
 身動きの取れないヤン、なかなか勇気のあるアリスに、どうにも抜けている感じが否めないキリオミ……。
 さて、みんなのバトルの行く末は――!?