グローリ・ワーカ   第19章:ずっと傍にいる

 ブチギレたトンヌラから逃げ回る面々。
 なぜか、他の四天王も巻き込まれて一緒に逃げ回るはめになっていた。
「ちょっと! あんたが余計なこと言うから妙なことになっちゃったじゃないの!」
 一緒に逃げながら、ミンミンがマニュアに怒鳴る。
「えぇ、本当に妙なことに……」
 その隣にはアルトもいる。
 マニュアは困った顔をして、一緒に逃げ続けていた。
「あれ、どうにか止める方法ないの、ミンミン?」
「知らないわよ!」
 そんな相談をしている間に、敵(トンヌラ)は迫ってきている!!
 ――と、突然、トンヌラがその場にぴたりと止まった。
「お?」
 マニュアたちもその様子を見てぴたっとその場に止まる。
「落ち着いた……?」
 と、思いきや!
「はー……めー……はー……めー……」
 両手を腰の辺りにやり、手首を合わせて手を開いて、なにかを呟き出した。
「――波〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!!!」
「って、それ南の島の大王!!!!」
 どっぐおおぉぉぉぉぉぉぉぉんっっ!!!!!!!!
 どういうわけか、壁一面吹き飛んだという。
「うわぁ〜! なんかもう……完全なるギャグだね! やったね! ギャグファンタジー返上だね!」
「いや、ファンタジーですか、これ……?」
「ある意味ファンタジーよ」
 そして、全員の頭がアフロになりましたとさ。

「って、あら? トンヌラ!」
「…………はっ! え? ミンミン? って、なんだ!? 壁がなくなってるぞ!!??」
「……正気に戻ったみたいね……」
 半分呆れて、半分ほっとして。ミンミンは言った。
「あぁ、それより、トンヌラ。あなた、杖はどこやったのよ?」
「え? あ、杖……?」
 2人してトンヌラの手を見る。
 ――ない。
「え? あれ!? どこやった!!??」
「これのことか?」
 ババーン!
 杖――ゴッド・ウィッシュは、なんとストームの手にあった!
「な、なにぃ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!????」
「お、ストーム! よくやった!」
「おまえ、俺たち――特に、アルトやホワイトたちを追いかけてるうちに、手から落としてたゼ。んで、この俺がそれをさっと盗ってやったのさ! おまえ、最後、○めはめ波を放った時にはもう持ってなかっただろー!?」
 ストームのドヤ顔。
 そして、ニールもドヤ顔で、
「どうだ! 俺たちの作戦は!」
「いや、別にたまたまだろ。なに勝手に作戦だったことにしてんだ!」
 ヤンが横からツッコむ!
「言ったもん勝ち!」
「おま……」
「くそ……っ!」
 悔しがるトンヌラ。
「……なにをやっているんだ、トンヌラ……」
 魔王が殺気を出しながらトンヌラを上から睨みつけた。
「も、申し訳ありませんっ!」
「――でさ、これ、結局なんなの? この杖」
 アリスがマニュアに尋ねた。
「杖はつえー」
 し――――――――――――ん……。
 ヤンのくだらないダジャレに、辺り一面、静寂と大寒波が訪れた……。全くウケず、首を傾げるヤン。
「…………えぇっと……。こ、この杖はね、グローリ・ワーカ専用の武器らしいんだよ!」
「らしいってなに!?」
「そもそも、杖でどう戦うの? 殴るわけじゃないよねぇ?」
 アリスやティルから質問され、しどろもどろになるマニュア。
「えっと……。と、とにかく! これで倒せる……ハズ! 人間界を救えるんだよ!」
 それでも少し興奮気味に、マニュアは言った。が、
「我々をそう簡単に倒せるかな?」
 強気の魔王の発言! しかし、こっちだって負けちゃいない!
「尻の穴から手ェ突っ込んで奥歯ガタガタいわせたろか」
 …………負けちゃいないさ、うん……。
「……マー……。本気……?」
「ジョークよ、ジョーク!」
 その余裕さえも見える態度に、魔王は笑って言った。
「いいだろう。こちらが勝った暁には、おまえに戻ってきてもらおう。そして、我らのために働いてもらうぞ」
 マニュアは強気のまま答える。
「いいよ! 負けないし! 当然こっちが勝ったらもう人間界は手出しさせないからね」
「クックックッ。よかろう。まぁ、どちらも生きていればの話だがな」
「……そうだね。絶対、絶対負けないから」
「そうだよ! 私たち、勇者グローリ・ワーカだもんね〜!」
 べーっとティルも魔王に向かって強気な態度を取る。
 マニュアやティルだけじゃない。みんな、なんだかもう負ける気などしていなかった。
「じゃあ、最終決戦いきますか! グローリ・ワーカ――READY GO!!!!」
 元気に声を張り上げ、拳を突き上げた。
 今、最終決戦の幕は下りた。最後のバトルが、今、始まった!!