グローリ・ワーカ   第22章:偶然じゃなくて必然

「と、とにかく! 攻撃するなら、呪法が効かない今のうちだよね! 魔王――ってか、魔父? も深手を負ってるし……!」
「そうだな」
 頷き合い、攻撃態勢に入る。
「ゴッド・ウィッシュもまだよくわかんないし、とりあえず――攻撃してある程度弱らせる感じで行こう! まぁそのまま倒せるならもちろん倒しちゃっていいけど!」
 マニュアが珍しくリーダーらしく指示する。指示ってほどでもないレベルではあるが。
「おい! 珍しくってなんだよ!」
「よし! んじゃ、攻撃すっぞ! 滅失拳!!」
 ニールが魔父目掛けて技を放った。拳から放たれた波動が魔父を包む。
『くっ……!』
「わぁ! ニールすごい!」
 ニールの攻撃に、素直に感心するマニュア。
『くそ……! だが、たいしたダメージではないぞ』
「ゲッ……。マジかよ、強いぞ、こいつ……」
 魔父の言葉に、ニールが青い顔をする。しかし、マニュアは特に困った様子もなく、
「魔父の強がりじゃないの? なんにせよ、スーちゃんの分もあるし、ダメージ蓄積されてるから大丈夫! ってなわけで、お次は私! ストップ ディサピアランス ディストラクション!」
 破壊の呪法を魔父に向けて放つ。
『シールド ガード!』
 しかし、呪法で防御されてしまった。
「あー、もお!!」
 悔しそうに唸るマニュア。
「剣3本一気投げ!」
「あ、なんかその攻撃見るの懐かしい」
 その後ろから、ストームが短剣を投げつけた。
 が、やはりそれも簡単に封じられてしまう。
「ぐぬぬ」
「じゃあ、次はこっちから行きまーす!」
 今度は、ティルが元気よく手を上げてそう言い、宙に魔法陣を描いた。
「おっきいの行くよー! ガアシエンディエタ!!」
 魔法陣から呼び出されたのは、巨大な竜に似た魔物。
「よーし! 行っけぇー!!」
「グアァァ――――ッ!!」
 ガアシエンディエタという名のその魔物は、雄たけびを上げると魔父に向かって思い切り火を吹いた。
『くぅ……っ! ガード リインフォースメント バッキング サポート プロテクション!』
 急いで周囲を呪法で保護する。
「よしっ! 今だ!! ダークネス ナイトメア ディスペア ルーイン アクション!!」
「土を司るノームよ。土の存在を此処に認め、力を我が前に示せ! ソイル・クラッシュ!!」
 ガアシエンディエタが火を吹いたとほとんど同時に、マニュアとヤンが呪法(魔法)を繰り出す!
 ドォン!!
『ぐあっ!!』
 ガアシエンディエタの攻撃は防げたものの、2人の攻撃までは防ぎ切れなかったようだ。
「よしっ!」
「ははははー! やった、やったー!」
『く、くそっ……! だが、私は負けぬ……!!』
 魔父はやられっぱなしだ。怒りに満ちた恐ろしい表情で睨みつけてくる。
「魔族の血が疼くったって、もう心は負けないもんねー! こっちの攻撃力がアップするだけさ!」
 そんな魔父の表情など気にも留めず、マニュアはべーっと舌を出して、笑った。
 更に、後ろから援護が加わる。
「魅惑の舞い!」
「アロー・クラッシュ・ブライトネス!!」
 アリスが舞いを舞って魔父の身動きを封じ、それをアルトが放った月光を纏う矢が貫いた!
『がっ!』
 その様子を見ていた(みんなに忘れられている)ピュウは思った。
 みんな、すごい……! 本気になればこんなにも強いんじゃないか――と。
 というか、いつの間にか元の姿に戻っている。
「ピュウピュ!」
 え? 前回から元の姿に戻ってた? あぁ、魔族の姿になってても影が薄いから、もう元の姿に戻って隅っこの方で応援してようということですか。
「ピュ……」
 落ち込んでいるピュウは置いておいて。
「――……ハァッ! 竜虎拳っ!!」
「ストレングス ヴァイオレンス ストライフ ブロウ アタック!!」
 ゴウッ!
 ニールの攻撃、そしてマニュアの打撃を与える呪法が同時に繰り出された!
『なんのっ! シールド ガード!!』
 魔父が呪法で防御する。……が、
「おまえって学習能力ないのかよ? 風を司るシルフよ。風の存在を此処に認め、力を我が前に示せ! ウィンド・ブロウ!!」
「私も応戦くらいできまーす! ガイアより加護を授からん。今、我らに力を与えんことを! オール・プログレス!!」
 再びヤンが魔法を放つ。その魔法にヒナの補助の魔法が加わり、より強力なものとなって魔父を襲った。
 しかも、ヒナの魔法はヤンだけでなく、他の仲間の力にもなった。
「おぉっ! なんか力がみなぎってくるゾ! よし! 剣5本一気投げ!」
 ストームがまた短剣を投げつけ、
「さっきより強力なの出ますかね? アロー・クラッシュ・ブライトネス!」
 アルトが先ほどより強力なものとなった攻撃を放ち、
「普通に殴るのもありだよねー?」
 アリスが扇子で直接殴り、
「バアル! 行っけぇー!」
 ティルが恐ろしい魔物を呼び出し、
「鋭烈斬!」
 スリムが刺すように魔父を斬り裂く。
『く、くそぅ……っ! こんなもの……! ぐぅ……っ!』
「フレイム・ガッシュ!!」
 再びヤンが魔法を放つ。爆発が起き、辺り一面煙で覆われた。
 その中からいつの間に近付いていたのか、煙を掻き分け、ヤンが飛び出してきた!
「ガァッ!」
 人狼である彼は爪を立て、魔父を斬り付けた。肩から腕へ、血が流れていく。
『なんの!』
 魔父もやられるばかりではない、傷を負ったにも関わらず、その腕でヤンを叩き落とした。
「くっ……!」
 これが狼の本能なのか、地面に叩きつけられる前にひらりと体を捻り、それは身軽にしっかりと足から地面へと着地した。
 そんな風に魔父がヤンに気を取られている間に、いつの間にかニールが魔父の背後に回っていた。
「背中ががら空きだぜ! 爆風拳!!」
 にやりと笑って力いっぱい爆風拳を放つ。
 拳から勢いよくまばゆい光が撃ち出される。魔父はそれを至近距離でまともに食らってしまい、吹き飛ばされて前のめりに倒れた。
『ぐぁーっ!』
 ……ってか、これ、普通に倒せるんじゃないの? と思うくらいみんな強い。
 ピュウは相変わらず呆然とその様子を見ていた。