グローリ・ワーカ   第3章:災難・その後

 薄暗い部屋、階段を降りたその先で待つものは――

「誰だ!?」
 マニュアの「冗談じゃない!」という叫び声に、そいつは気付いた。
「あぁぁっ!! ばれた!!!!」
 焦るマニュア。
 だが、あれだけの大きな声を出していればあたりまえのような気もする。
「ちっ! 人がいたのか!!」
 人影に気付いたそいつは、その人影――マニュアに向かってナイフを投げてきた!
「ひゃ――――――っ!!!!」
 ひゅん!
 危機一髪とはまさにこのこと。
 ナイフはマニュアの頬をかすめて、壁に突き刺さった。
「ちっ! 外したか。次はそーはいかねーぜ!」
「やーれ、やーれ!」
「殺せ――――!」
「…………」
 1人しかいないのかと思ったら、どうやらかなりいるようだ。最低でも――4人。
「行くぜ!」
 その中のボスと思われるやつが、またもナイフを投げようとした。
「ちょ、ちょっと待って!」
 マニュアが慌てて言う。
 そう言われて、おもわず手が止まってしまった。
「なんだ?」
「あなた――名前は!?」
 ズテッ。
 そいつらはみんな、力強くこけた。
 ……マニュアちゃん、こんな状況だというのに……。
「だ、だって、せっかくだし!」
 ナニがどう『せっかく』なんだ!?
「これから死ぬやつには関係のないことだ」
「そ、そんなぁ」
 体勢を取り直し、そいつはナイフをおもいっきり投げた。
「死ねっ!」
(もー! マジでダメッ!!)
 ――が。
「あら? あれ、れ、ろ、ら? てぃ、えい、やぁ、とぉ――――っ!」
 スカスカスカスカスカッ!
 全部当たらない。当たる素振りすらない。
(……もしかして、さっきの――まぐれ? ……それにしても、ナイフいくつ持ってんだ?)
 たしかに、おもわず同意したくなるくらいのナイフの数。
 と、思ったそのとき、1本だけ。
 ひゅん!
「顔面めがけてまっしぐら――――――!!」
 そのとき!
「ピュウ――――――――!!」
「ピュウ! よかったぁ! シザーバッグつけっ放しで!」
「ピュウ」
 間一髪、ピュウが飛び出てきて、そのナイフを咥えて取った。
「えっへん」とばかりに反り返るピュウ。
 その様子を見て、そいつは情けない声を上げた。
「ああ――――――――っ!! て、てめー! よくも俺様がうまく投げたナイフを……!」
「今だ! ピュウ! マイクを!!」
「ピュウ!」

 …………。

「参ったかー!! わーっはっはっはっ!!」
 盗賊達は10000000のダメージ。全員ぶっ倒れてしまった。
 大口を開けて笑うマニュア。
「……マ、マニュア……ちゃん……。今の……い、いったい……どー……した……の……?」
「ホ、ホワイト……てめー……いったい、なんなんだよ……!」
 この歌声に、さすがのティル達も起きたようだ……。