グローリ・ワーカ   第4章:人間と魔族

「皆さん、ありがとうございました」
 メテオがマニュア達にふかぶかと頭を下げる。
 マニュア達は慌てて、
「いえいえ。もとはと言えば、私達が目を離したのが原因ですから!」
「でも、皆さんのおかげで無事に戻ることができました。特に、ヘリオドールを助けてもらったことに関しては――感謝してもしきれない」
 メテオが笑顔で言う。
 意識を取り戻したヘリオドールも頭を下げた。
「ほんとうにありがとうございました」
 慣れない応対に、とにかく照れるしかなかったのだった。
「――ノア」
 トーンが、ノアに声をかけた。
 ノアが振り返る。
「トーンくん……」
「あ――……」
 トーンがなにかを言いかけ、躊躇い、そして言ったのは――
「お、俺は謝らないからな! おまえも行くって言ったんだからな!」
「う、うん……」
 トーンの迫力に圧され、ノアが頷いたその瞬間。
 ゴン!!
 なんともいい音が響いた。
 最初はメテオに文句を言っていた、トーンの父親であるその男が、トーンの頭をおもいきり拳固で殴っていた。
「――――ッ……!! 痛ぇな! クソオヤジッ!! なにするんだよ!」
「なにするんだよじゃない!! あれだけ山には近付くなと言ってあったのに! おまえのわがままがどれだけ人様に迷惑かけたと思ってるんだ! ノアくんに謝るんだ!!」
 男が怒鳴る。
 おもいがけない行動に、みんな、唖然としてしまった。
 あれだけ最初に文句を言っていた男が、こんなことを言うなんて。
 男は、トーンの頭をむりやり押さえて下げさせ、自分も深く頭を下げた。
「こいつのわがまま、さらにこちらの勘違いで大変な迷惑をかけてしまい、ほんとうに申し訳ありませんでした」
「…………」
「トーンも謝るんだ」
「……ごめんなさい」
 頭を下げたまま上げようとしない男。メテオは慌てて、
「い、いえいえ! そんな! こちらこそ、ノアが着いていってしまったのはトーンくんだけのせいではないので! ……どうか、頭を上げてください」
「ほんとうに――」
 男は頭を上げて、申し訳なさそうに笑った。
「――魔族は悪いヤツばかりだと決めつけていたが、そうじゃないんだな。今まですまなかった」
 メテオとヘリオドールはいっしゅん驚いた顔をして、互いに顔を見合わせて微笑んだ。
 その後ろでは、
「ノア……ごめん」
「トーンくん……でも、僕、ちょっとだけ楽しかったよ」
「――そうかっ!」
 ノアとトーンが笑顔で話していた。
 こうして、少しずつでも、人間と魔族の距離が縮まればいい。それを少し離れた場所から見ていた5人は、そう感じた。

「ほんとうに、お世話になりました」
 その翌日。また旅立つマニュア達に、メテオとヘリオドールが頭を下げる。
「いえ! それはこちらのセリフです!!」
 おもわず恐縮してしまう。
 なんて人間のできた人達なんだ。いや、魔族だが。
 ヘリオドールの後ろに隠れたノアが5人を見上げ、恥ずかしそうに言った。
「あ、あの……」
「ん?」
「……あの――また、遊びに来てくれる?」
 なんともかわいらしいお願い。
 5人は笑顔になって、
「もちろん! また遊びに来るよっ!! だって、友達でしょぅ?」
 ノアの表情が明るくなる。
 そして、笑顔で答えた。
「うんっ!!」

 それは、ある日、ある時。旅の途中。ある町外れでの出来事であった――





「……ピュウ」
 あ゛。
「ピュピュ、ピュウピュピュウピュ……」
 訳:僕、まったく出番なかった……。
 がっくりと肩を落とすピュウだった(肩ないけど)。
 そして……ギャグファンタジーのはずなのにギャグがほぼなかったことに、がっくりと肩を落とす作者だった。
「がっくりすんなよ……ι」