グローリ・ワーカ   第7章:呪法

 イグニスの町の片隅、建物の影で、魔物の首に掛けられた石からその声はした。
『ミリア!』
 その声、その呼び名にマニュアが反応する。
「ま、まさか……お父さん?」
「「「「「「ええ――――――――っっ!?」」」」」」
 当然の如く、他の皆は驚きの声を上げた。
 更にアルトは……
「ホワちゃんのお父さんって、魔物だったの!?」
 ボケをかました。
 ズテッ!!
 その言葉に派手にこけたのはマニュアと魔物だけで、他の皆は驚いた表情のまま、
「えっ!?違うの!?」
「あ〜の〜ね〜!あったりめーだろーがっ!魔物に言ったんじゃなくて、この声に対して『お父さん』って言ったのであって!この声は魔物の首にあるあの石から出てるんであって、魔物が喋ってるわけじゃないだろ!!この石を通して語りかけているんであって、お父さんがこの魔物ってわけじゃないから!!!!」
 ぜぇはぁと息を切らして説明するマニュア。
「ていうかマニュアちゃん……言葉遣いが男っぽくなってるよ…」
 そう言うティルをキッと睨みつけ、
「そんなのはどーでもいーの!!」
 今度は魔物に向かって、マニュアは言った。
「それより、お父さん!何を言いに来たわけ……?」
 魔物の石は答えた。
『……ミリアよ…戻ってくるのだ。魔ぞ……』
「ワ゛――――――――――――――――ッッ!!!!」
 慌てて言葉を遮る。
「マゾ?」
「って、ちっが――――――――――う!!」
 とんでもない誤解を招いたようです。
 マゾの意味が分からない人は……辞書で調べてくださいね☆
 尚も続ける石の声。
『お前は、魔……!』
「マニュア、で――――すぅ!」
 更に誤魔化す。
 皆は少しイラッとして、
「マニュア!それが何なんだ!」
 その名に、石の声が反応した。
『『マニュア』…?お前の名前は『ミリア』では…?』
 その言葉に、マニュアはピーンと頭の上に電球を浮かべた。
(はっ!いーこと思い付いた!)
「私は『ミリア』って名前じゃないよ。『マニュア』です!人違いじゃありませんか?」
 …………
 一瞬の沈黙。
『それでは…何故さっき『お父さん』と呼んだのだ?』
「ギックゥ!!!!」
 擬音じゃなくて自分で言うんだ…。いや、気にする部分じゃないですが。
 マニュアは冷や汗をかきつつ、
「え、え、え、えっとぉ――――それはぁ――――――……」
『ミリアよ!戻ってこい!いつまでも魔族のお前がここにいられると思うか!?』
 痺れを切らした声が言う…
「「「「「「まっ…魔族―――――――――――っっ!!??」」」」」」
「…………お父さん…」