グローリ・ワーカ 〜Next Stage〜   第1章:赤と青の攻防戦

 澄み渡った青空の下。どこからか、太鼓や笛の音が響いてくる。
 幼い少女は音のするほうへと駆け出した。時折、振り返っては母と母に抱かれている妹の様子を確認する。
 音はだんだんと大きくなっていく。
 少女の向かう先から、それは近付いてきた。
 美しく装飾された大きな乗り物、それに乗る人、仮装をして踊る人、その周りで楽器を演奏する人――
 なにもかもが少女には初めてで、きらきらと輝くその光景に、目を見開いた。

「ねーねー。おかーさん! すごいよ、すごい!」
 少女は飛び跳ねながら感嘆の声をあげる。
「ほら。そんなにはしゃぐと、帽子が脱げちゃうわ。ちゃんと被りなさい」
 母は娘にそう声を掛けた。少女は母のほうを振り返り、帽子を深く被り直す。
 お揃いの帽子を被る妹は、母の腕の中ですやすやと眠っていた。
 少女は再び前を向くと、乗り物や、その周りで踊ったり演奏したりしている人の列を、まじまじと見た。
「ねーねー。おかーさん! あれ、なに!?」
 その集団と母の顔とを交互に見ながら、興奮した様子で尋ねる。
「パレードね。……今日は、この国ができて100年目のお祭りなのよ。100年で、ここまで力をつけて、大きくなったの。人間界では1番大きな国なのよ」
「へぇー! よくわかんないけど、すごいんだね! ひゃくねん! おまつり!」
 目を輝かせながら言う娘に、母はくすくすと笑った。
「あ。あっち! おいしそーなのがあるよ! おかーさん! あれ、食べたい!」
 次の瞬間には、今度は並ぶ屋台へと目を移していた。その中の1つを目標に定めると、少女は駆け出して行ってしまう。
「あ! 走ると危ないわよ! 待って、ミリア!」
 母の呼ぶ声も少女の耳には届かない。彼女の瞳には、今、屋台に飾られているそのおいしそうなりんごあめしか映っていない。
 そのまま人ごみの中へと埋もれて、母は娘――ミリアの姿を見失った。
「ミリア! ミリア、どこ!?」
 心が弾むようなリズミカルな音楽と、ざわざわと賑わう人の喧騒と。
 ごった返す人の中、母の声は届かない。辺りを見渡しても、姿を見つけることができない。
「ミリア!!」