グローリ・ワーカ   第12章:タイムリミット24時間

『ティル、アルトさん――聞こえますか!?』
 突然、緊迫した声が響いた。
 それは、シリアに渡されたあの石――エレクトロマグネティッククリスタルから聞こえてきた。
「それにしても、アイテム名、超長ぁっ!!」
「もう略してエロマックスで良くね?」
「ちょ! 略、中途半端すぎて分からない! ていうか、下ネタっぽく言いたかっただけですか!?」
 あ、変な略言ったのはもちろんマニュアですよ、念のため。
『なに言ってるんですかー!? あと1時間しないくらいでもう24時間経ってしまいますよ! それに、こちらもたいへ――って、お姉ちゃん見つかったんですね! 良かった……』
 早くもそんなに経っていたらしい。もしかしたら、向こうとこちらの世界では時間の流れ方が違うのかもしれない。
 シリアも最初は慌てた様子だったが、マニュアの声を聞いて、ほっと落ち着いた声に変わった。
「シリア!」
『……マニュアお姉ちゃん!!』
「……シリア……。本当に、本当にごめんね! ごめんねっ!! ごめんなさい……」
『……うん……』
 ティル、アルトの前で――たぶん初めて本気で涙を流したマニュア。
 2人はその様子を温かく見守っていた。

『あ! それより早く! 戻ってこないと、ティルとアルトさんの体が腐ります!』
「あぁ! そうだ! 早く戻らないとぉ!」
 シリアの言葉に慌てるティルとアルトの2人。
『早く戻ってきてくださ――』
 シリアとの通信が途切れる。
 マニュアは元気良く腕を上げると、
「よっし! じゃあ、マニュア様が魔界へ戻る穴を開けてあげましょうかね!」
 その言葉に、ティルが笑いながら言う。
「あ、マー。私たちもその呪法使えるようになったんだよー」
「へ? マジで!?」
 驚くマニュアに、アルトも頷き、
「うん。ティルちゃんと私、2人でないとダメらしいんだけど、ここに来るのも2人で穴を開けて……ね」
 ティルと顔を見合わせて、また笑顔で頷いた。
「そうかー……。なかなかやるな。――っと、とにかく、穴開けるよ!」
 最初一緒に頷いていたマニュアも、またふっと思い出し、慌てて言う。
 そして、手をまっすぐ前へ伸ばすと、ふぅっと落ち着いた声で呪法を綴っていく。
 その声が止む頃には、闇へと通じる穴がしっかりと目の前に広がっていた。
「さぁ! ティルちゃん、アルトさん、行くよ!」
「「うん!」」