僕の生存日記   第9話:偽装ラバーズ

 こんにちは! 僕は『川野辺 葉乃』。小竜高校に通う1年生。
 入学してすぐに『神成 躍人』先輩と出会って、幼馴染である『千羽 緋路』に相談したらもっと大変な目に遭って……かわいいなと思ってたクラスメートの『黒井 姫』さんも結構……なんというか――クセのある人、だったし……転校生の『今池 輝也』君もナンパな変人だし……。
 まだ1学期だというのに、こんな濃い高校生活を送るとは思ってなかった。

 ――とまぁ、そんな1学期最後の総まとめである期末試験も無事終わり、あっという間に終業式の日がやって来た。
 今日が終われば夏休み。しばらくみんなと会えないと思うと――正直、ちょっと楽だなとは思うけど――やっぱり少し寂しい気もする。
 それに、デートの後から黒井さんとも上手く話せてないし、話せたのも僕が千羽が持ってきた薬のせいでおかしくなってた時だったし、しかもものすごく恥ずかしいことしてしまったし……! この状態で夏休み入るとか……どんな拷問だよ、これ……。
 この状況を打破するには、勇気を出して話しかけるしかないんだろうけど……。そんな勇気なんて、ない。
 でもでも。このままなのも嫌だ!
 うわーどうしようどうしようどうしよう。
 僕がぐるぐると1人悩んでいるうちに終業式も終わり、あっという間に帰る時間になってしまった。
「姫! かーえろっ♪」
「唯!」
 黒井さんの親友である早瀬さんが、彼女を迎えに来た。
 あぁ、今黒井さんに話しかけないと、行ってしまう。
 勇気を、勇気を出さないと――
「――黒井s」
「よーぅ! 葉乃〜! 一緒に帰ろうぜ! あ、どっかでお昼食べてかないか?」
 最悪のタイミングで千羽がやって来た。
「――……っ! せ〜ん〜ば〜……今、それどころじゃないんだよ!」
 千羽の方を振り返って一言文句を言い、再び前に向き直る。
 と、既にそこに黒井さんの姿はなかった。
「って、もういない!!??」
 僕はひとしきり落ち込んだ後、とりあえず千羽をはたくのであった。
「痛いっ!!」